帝塚山学院 帝塚山同窓会

ゲノム医療の世界的権威・中村祐輔さん(小47回)の活躍 2016①        ~BIO JAPAN 2015~

2001年から同窓会会報「てづかやま」とホームページで度々ご活躍の様子を紹介させて頂いています中村祐輔さん(現シカゴ大学教授)ですが、改めて中村さんのプロフィールを紹介します。中村さんのご活躍の様子は、今後もシリーズとして紹介していく予定です。

1977年に 大阪大学医学部卒業後、大阪大学医学部付属病院(第2外科)に勤務、1987年より  米国ユタ大学ハワードヒューズ研究所研究員、医学部人類遺伝学教室助教授として勤め、1989年 (財)癌研究会癌研究所生化学部部長を経て1994年より 東京大学医科学研究所分子病態研究施設教授、ヒトゲノム解析センター教授をされ、理化学研究所ゲノム医科学研究センター長、内閣官房参与、内閣官房医療イノベーション推進室長を併任されています。2012年より シカゴ大学医学部内科・外科教授 個別化医療センター・副センター長として活躍されております。

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平成27年10月15日、アメリカから一時帰国中の中村祐輔さん(47回卒、医学博士、2004年 紫綬褒章受賞)が、「BIO JAPAN 2015」(パシフィコ横浜)にて講演されると聞き、広報委員が訪問しました。

かつて、日本における医療改革の司令塔として内閣官房「医療イノベーション推進室」室長に就任された中村さんが、東大教授の職も辞してアメリカへ発たれたのは今からほぼ4年前。「この10数年、日本発の抗がん剤がひとつも生まれていない危機感」からの行動でした。
2012年春 研究環境が整っている「シカゴ大学医学部・個別化医療センター」へ移籍の折は「日本の頭脳流失」としてマスメディアでも度々取上げられましたが、その後も毎年数回の短期間帰国の際、中村さんは日本での講演と啓蒙活動を続けられています。
 
そして、この日の表題は「immunopharmacogenomics(免疫薬理ゲノミクス)のインパクト」※注
 
かねて薬を患者さんごとに、より安全に提供する「オーダーメイド医療」を提唱してきた中村さんですが、個々の患者さんに適した「個別化医療」を可能にする為には、免疫薬理ゲノミクスの研究が最重要と主張されてます。
中村さんによると、がん治療の分野では、がん患者本来の免疫力を高め、がん細胞増殖を抑える「免疫療法(がん特異的ワクチンを含む)」が、外科療法、化学療法(抗がん剤)、放射線療法に次ぐ「第4の治療法」として世界的にも定着しつつあるのですが、日本がこの分野で遅れてしまったとの危機感が中村さんにあります。「免疫療法(がん特異的ワクチンを含む)」は科学的にも証明されており、従来の抗がん剤のような副作用も少なく、より患者さんに優しい治療法との主張です。
 
これまで数々のがん特効薬となる有力物質を発見してきた中村さんの研究室ですが 昨秋発見した有力候補となる化合物も、2016年内に臨床試験が始まる予定で、世界中から問い合わせが相次いでいます。
 
日本では遅々として進まない「個別化医療」は アメリカでは「プレシジション・メディスン Precision Medicine 」と言われ、2015年1月、オバマ大統領自らが一般教書演説の中で「プレシジション・メディスン・イニシアティブ」に関する詳細を発表するなど、国をあげて確実に動き出しています。
2015年12月24日、日本滞在を終えた中村さんは ご本人のブログ(はてなブログ:中村祐輔のシカゴ便り)で、“今回の帰国で、メディア、研究者仲間、官僚の人達など多くの人と日本の現状への危機意識を共有したが、皆、危機を乗り越える術が見つからないで混乱している。”と、記されていました。
 
日本の医療における問題点を熟知し、その対策も考えられている中村さんは、「2016年は危機を乗り越える為に動く」と決意されており、2016年こそ、日本でも政府主導の“個別化医療元年”宣言を期待したいと発言されてました。
 
                        (広報委員:古谷、烏野、田中)
 
※ゲノム解析技術の進歩によって、多数のがんに関連する遺伝子異常が同定されています。しかし、時々刻々変化する体内の免疫細胞の動きに関しては、がんのみならず、多くの疾患に関与しているにもかかわらず、その多様性故に、まだ,十分な解析が行われていません。免疫薬理ゲノミクスは、これらに挑戦する学問領域であり、これからの10年の生命科学・医学の鍵を握る研究分野と予測されています。
「immunopharmacogenomics(免疫薬理ゲノミクス)」は、中村さん自らが作った造語で、「免疫細胞のゲノム情報に基づいた薬作り」を可能にする為の最先端の研究分野を示す言葉です。
 
 
※中村祐輔さんの研究成果については シカゴ大学、中村研究室HPに詳しく掲載されています。 http://nakamuralab.uchicago.edu/
 

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